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 かなり間が空いてしまいました…!
 申し訳ありません……でも生きています……!

 リハビリお題5作目、今回も『the Legend』です。

 トーザがねこを飼ってるって設定はずっと前からあったのですが、トーザの家が出て来る機会が全然ないためねこを出さずに今まで来てしまいました。
 ちなみにねこを飼い出したのは、父親がいなくなってからです。




『055 甘えんぼ:the Legend』


「オレは今日こそ勝ってみせる…」

 重々しく呟き、決意もあらわに両の拳をぐッと握り締めるヴァシルを、

「それトーザの家来る度に言ってる」

 醒めた声でばっさりと切り捨てて、ドアをノックするチャーリー。



「いらっしゃい、待ってたでござるよー!」

 満面の笑顔で二人を出迎えたトーザ。
 胸の前にだらんとぶら下げるようにして一匹のねこを抱いている。

「ほーら、お客様にごあいさつでござるよー、ミカヅキー」

 抱いたねこの手を片手でくいくいと曲げさせる。
 四本の足の先に白靴下を履いた黒猫で、額のところにある三日月型の白い模様がおそらくは名前の由来だ。
 無理矢理招かされながらみゃあと鳴くねこに、今にもため息をつかんばかりに呆れたといった感じの視線を向けつつ、

「夕飯のご招待ありがとう」

 チャーリーはとりあえず挨拶代わりの謝辞を述べる。

「今日のメニューは拙者の手打ちそばでござるよ、気に入ってもらえるといいんでござるが。さっ、どうぞ中に入ってくつろいで…、…おや、何してるんでござるか? ヴァシル」

 トーザが不思議そうに目を向ける先には、ドア横の壁にぴったりと背中を貼りつかせた状態で忙しなく周囲を見回している、あからさまに不審なヴァシルの姿。

「いや……他のヤツはどこにいるんだ、今日は?」
「他のヤツ? シンゲツとアカツキのことでござるか?」
「名前覚えられてねえんだけど、あと二匹いるネコだよ」
「トーザん家の猫の名前ぐらいそろそろ覚えなさいよ、もう何年も前からいるんだから…」
「シンゲツならほら、そこにおるでござるよ」

 ミカヅキを片手で抱き直し、トーザが笑顔で指さしたのは───天井。

「「え?」」

 チャーリーとヴァシルが無意識に揃いの動作で見上げる、頭上には。

「なッ……!? 猫が天井にさかさまに貼りついて……ッ!? って、ぎゃー!!」
「うわー! チャーリー!!」

 見上げる視線に気づくと同時に、完全に気配を消した状態であたかもコウモリのように天井から様子をうかがっていた、真っ白なねこが空中に身を躍らせる。
 わずかな落下時間にも関わらずひらりと華麗に身体を反転させたシンゲツは、慌てて逃げようとしたチャーリーの顔面に確信犯的な正確さでべちゃりと腹から着地した。

「あっはっは、シンゲツはやんちゃでござるなぁ」
「───ッ、ぶはっ! やんちゃとか言う問題じゃあないッ!」

 怒鳴りながら、チャーリーは白猫の首の後ろを容赦なく掴み、べりっと引き剥がす。

「ヘタしたら首が折れるわ……!」
「シンゲツは小柄ゆえ大丈夫でござるよ」
「かばわないでしつけなさい!」
「拙者も何度かやられてるでござるが、せいぜい首の筋を痛める程度で」
「負傷した経験があるならなおさらに…!」

「おい、もう一匹はどこだ…ッ!?」

 チャーリーとトーザのどこか噛み合わない呑気なやりとりに、焦った表情のヴァシルが割り込む。

「アカツキなら……」

 トーザの台詞を最後まで待たず。
 ドアのところでごとんと派手な物音。
 びくうッと大きく身を引いたヴァシルの足元に、転がって来たのはジャムの瓶。

「な、何でこんなトコにジャム…? ……はッ!!」

 飛びのいた拍子に、ヴァシルは壁から背中を離してしまっていた。

「まさか…! ッぅわあぁッ!?」

 がら空きになった背中に、部屋の隅から跳躍した影が獲物を仕留める肉食獣じみた動きで飛びかかる。
 ねこにしては大き過ぎるが、犬と呼ぶにはいささか小さい。
 赤茶色に漆黒が乱雑に混じり込んだ毛皮を持つアカツキが、四肢に備わった鋭い爪を必要以上にフルに駆使してヴァシルの背中にぶら下がる。

「ぎゃー! ツメ! ツメー! オレの髪がー!! ちくしょー何だよコイツー!!」
「あっはっは、アカツキは甘えんぼでござるなぁ。ヴァシルが来たらいっつもああやっておんぶをせがむんでござるから」
「あの猫いま陽動使わなかった…? ジャムの瓶転がしたのあの猫だよね…?」
「ネコが髪に絡まって外れねえ!! ああもうッ、今日こそはこんな目に遭ってたまるかって警戒してたってのによ…ッ!! おいトーザ、何とかしろよッ!!」
「今日もヴァシルに遊んでもらえてよかったでござるなー、アカツキー」
「そうじゃねえ!! ペットに甘いのもたいがいにしろ…!!」
「ったく……トーザの猫バカには困ったもんよね……」
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