創作に関するメモなど。
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少し間が空いてしまいました。
グリムスの木が弱ってる…!!
リハビリお題4作目、今回も『the Legend』です。
これも、チャーリーがまだ村に慣れていない頃のお話です。
文中で互いに呼びかける以外に名前が出て来ないのはもはや仕様です。
<ちょっと私信/>
すっかり遅くなりましたがフォームからのコメントありがとうございます!
またいつ途切れるかと相変わらず危なっかしい更新ですが、お付き合いいただければ幸いです。
全部消えてしまったんですか…?
それは災難でしたね……;
</私信ここまで>
グリムスの木が弱ってる…!!
リハビリお題4作目、今回も『the Legend』です。
これも、チャーリーがまだ村に慣れていない頃のお話です。
文中で互いに呼びかける以外に名前が出て来ないのはもはや仕様です。
<ちょっと私信/>
すっかり遅くなりましたがフォームからのコメントありがとうございます!
またいつ途切れるかと相変わらず危なっかしい更新ですが、お付き合いいただければ幸いです。
全部消えてしまったんですか…?
それは災難でしたね……;
</私信ここまで>
『098 忠告:the Legend』
オトナの忠告なんて、コドモにとっては聞き流すためにあるようなものだ。
「子ども達だけで森に入ってはいけない」なんて言われたなら、それはきっと森の奥深くに何かとても面白いことが待っているからに違いないなんて風に思い込んでしまう。
道に迷って帰れなくなってしまうから、あるいは危険な動物がいるかもしれないから、なんて理由、説明されてはいるもののほとんど記憶には残らない。
ほとんど残らないながらもほんのわずかには頭の中にひっかかって残っていたその記憶は、大体の場合何もかもが手遅れになってしまってからいやに鮮明によみがえってきて、ただでさえどうしようと思っている心をさらに混乱させてくれる。
平和と平穏を絵に描いたような村の中や周囲で遊ぶのに飽きて、シェリイン村の外れにある森の中に踏み込んでしまった子どもが三人。男の子が二人、女の子が一人。
二人の男の子は兄と弟、女の子は彼らの隣りの家に住む一人娘。いずれも十に満たない年齢、年が近いから実のきょうだいのように仲良くいつも一緒に遊んでいる。
森を探険しようと思いついたのは三人の内で一番年上の女の子だった。
「おとうさんとおかあさんに叱られる」「オトナのヒトは入っちゃいけないって言ってた」と渋る兄弟を「アンタ達それでも男の子なの!?」と理屈にもならない理屈で説き伏せ、意気揚々と探索に繰り出したものの。
ものの見事に道に迷ってしまった。
ちょっと入って戻って来るだけ、だから迷う可能性などなかったのに。
子ども達だけで足を踏み入れる森の中は大人達に連れられて来るときとは全然違って見えて、だからついうっかり入り込み過ぎてしまったのだ。珍しい花を見かける度、あるいは聞いたことのない鳥の声を聞きつける度に奥へ奥へと。
はっと我に返ったときには三人の子どもは引き返せないほどの深みにはまっていた。
確かにこっちから来たと思われる方向には隙間なく木々が立ち並び、通れるような道などない。
戻るはかなわず、かと言ってこれ以上進む勇気もなく、子ども達はすっかり困り果てて一本の木の根元に座り込んでしまう。
梢の間から見上げる空はすっかり暮れ始めていた。
出口が見つからないぐらいに広い森を、じわりと闇が侵食してゆく。
次第に暗くなる景色を意識した途端、それまでは感じなかったような肌寒さまでが襲いかかって来て、三人は互いにぴったりと身を寄せ合い、不安げにあたりを見回した。
真ん中に挟まれた男の子、一番年下の弟が我慢出来なくなったようにしくしくと泣き出す。
「……どうしよう……」
女の子の呟きがぽつりと冷えた空気の中に落ちるのを、待っていたようなタイミングで。
彼らを囲む木立の陰から、不穏な唸り声がいくつも聞こえて来た。
びくりと身体を震わせて改めて見直せば、徐々に濃さを増す闇の中、光る目が複数組、こちらをぎらりと睨みつけていた。
「……!!」
子ども達に気づかれても怯む様子などまるでなく、むしろこれで隠れている必要はなくなったとばかりに歩み出て来たのは、飢えた瞳を光らせたオオカミ達である。
「ひッ……」
引きつった悲鳴をあげて後退ろうとするも、既に背中は大木の幹にぴったりと押しつけられていてそれ以上後ろには移動出来ない。
咄嗟に立ち上がって逃げ出すような機転も気力も子ども達にはなかったし、もし走り出すことが出来たとしても獲物を狩るオオカミの脚力には到底かなわない、あっと言う間に捕まってしまうに違いない。もはやどうすることも出来ない。
それにしたって、オトナ達の言いつけを破った結果がオオカミの晩ご飯にされてしまうことだなんて、あんまりだ。ちょっと探険してみたかっただけなのに、ただそれだけなのに……。
「たッ……助けてェ!!」
甲高い声で叫んだのは、自分だったのか、それとも他の二人の内のどちらかだったのか、あるいは三人同時に絶叫していたのか。
接近してきたオオカミが獲物に飛びかかろうと姿勢を低くしたのを目の当たりにして、子ども達の必死の声が森の静寂を破った───その刹那。
オオカミと子ども達との間、丈の短い草が覆った地面の一点が、チカッと青白い光を放つ。
わずかな異変にオオカミ達が思わず動作を中断した、次の瞬間。
派手な爆音があたりに轟き、豪快な爆風がオオカミ達に襲いかかる。
大木の根元にへたり込んでいる子ども達にはまるで影響を及ぼさず、髪の毛の一筋も動かさない、不可思議な爆発。
驚いた先頭のオオカミがぎゃうんと悲鳴をあげて飛びのき、その場から一目散に逃げ出した。仲間のオオカミ達もそれに引っ張られるように、脱兎の如く姿を消す。
後に残されたのは、抱き合って震えている子どもが三人。
たった今目の前で何が起きたのか誰にもわからず、涙に潤んだ瞳をまばたかせるばかり。どうやら助かったようだという認識さえ、すぐには出て来ない。
「ほらなー、やっぱココだったろ?」
不意に、明るい声が聞こえて来た。
視線だけを動かしてそちらを見やると、左手にある木々の間から一人の少年が出て来るところだった。
膝の後ろまでも長さのある金髪の先端を青いリボンでまとめた、特徴的なその髪型の少年を、子ども達はよく知っていた。
「に……にぃちゃあん!!」
男の子二人が弾かれたように立ち上がり、少年に駆け寄る。そのまま体当たりする勢いで抱きつき、腰にすがってわんわん泣き始めた。
「うわっ、ナニ泣いてんだよお前ら? どっか怪我したのか? ん?」
「怖かったんでござるな。もう大丈夫でござるよ、お主達」
面妖な言葉遣いながらも優しい口調でそう言ったのは、金髪の少年の隣りに立った、赤毛の少年。真っ赤なリボンを首の後ろで揺らして、他の皆とは明らかに雰囲気の異なるキモノと呼ばれる衣装を身にまとっている個性的な彼のことも、子ども達はよく知っている。
「あー、まぁ、あんなの出て来ちゃ怖いよなぁ。でももう追っ払ったんだから泣くなって。ほらほら、泣きやめー」
弟の方のやわらかほっぺを両手で掴んでむにーと引っ張っている金髪の少年の後頭部を、無言で歩み寄っていた黒髪の少女が無言のままひっぱたいた。
「痛ッ!?」
抗議するように振り向く少年には目もくれず、少女は木の根元に座り込んだままの女の子の方へと歩いて行く。
「もっと他に泣き止ませ方があるでござるよ…」
とりなすように赤毛の少年が口を開く。
「他? …たかいたかいとかか?」
「いや、それ以外で……大体、ヴァシルはそれやると本気で放り投げるでござろう…?」
「だって中途半端な高さじゃつまんねーだろ」
少年二人の会話を背中で聞き流し、黒髪の少女は立ち上がれずにいる女の子の前に立った。
レンズの大きな眼鏡をかけて黒い服を着た少女は、とてもキツい目をしている。
子ども達は彼女のことも知っている。二人の少年ほどには、面識があるワケではなかったけれど。
先刻の不思議な爆発、オオカミを追い散らして自分達を助けてくれたのは、魔道士であるこの少女に違いない。
「……ごめん、なさい」
見下ろす少女に、女の子は謝罪の言葉を呟いた。
「ウィルとラルフを連れて来たのはあたしなの。二人はイヤがったんだけどあたしがムリ言って森に入ったの。二人は悪くないの、森に入ったのはあたしのせいなの、だから怒られるのはあたしだけなの、ごめんなさいッ!!」
ぎゅっと目を閉じて、一息にそう言って。深く頭を下げる。
そのまましばし待ってみたが、覚悟していた叱責の台詞はいっこうに降って来なかった。
「……?」
恐る恐る目を開く。
相手がもう一度自分を見上げるのを待っていたように、黒髪の少女は女の子の前にしゃがみ込んだ。
目線の高さを合わせて、静かに口を開く。
「私は君を怒ってない。と言うか、誰も君を怒ってない。心配はしているけれど」
女の子をまっすぐに見つめる黒い瞳は、優しいものではなかったけれど、厳しさを感じさせない程度には穏やかな光を湛えている。
「君が謝るべきなのは、村で心配しているご両親に対して、でしょ。私には謝らなくていい。私は、ただ頼まれて君達を迎えに来ただけだから」
淡々とした口調でそう言うと、黒髪の少女は女の子の前にてのひらを差し出した。黒い指抜き手袋をはめた、大きくはないてのひら。
「じゃあ、帰ろう。これ以上暗くなる前に。無事で良かった、ティナ」
微笑みかけるでもなく抱きしめてくれるワケでもない。黒髪の少女の対応はどことなく事務的でむしろ冷たくさえ思えるものだった、けれど。
女の子は差し出されたてのひらに縋り、まだ少しだけ震えている足に力を込めて立ち上がる。
立ち上がった女の子の顔を、少女がポケットから取り出したハンカチで丁寧に拭ってくれた。
「ありがとう、おねえちゃん……」
女の子が小さな声で感謝を述べると、見下ろす黒い瞳に宿ったキツい光が、その瞬間だけほんのわずかに和んだように、感じられた。
それから森の外に出るまで、兄の方を金髪の少年が、弟の方を赤毛の少年が背負って運んでくれた。女の子は黒髪の少女に手を引かれて、自分で歩いて帰路を辿る。
「にいちゃん達、どうしてボクらがあそこにいるって、わかったの? ずっと探し回ってくれたの?」
「んなコトしてたら朝になっちまうって。オレ達も昔この森に勝手に入ったことがあって、やっぱり迷ってあそこに出ちまったんだよ。なっ、トーザ?」
「懐かしい思い出でござるなー。確かあのときは、ヴァシルの兄上が迎えに来てくれたんでござったな」
「そうそう。帰ってからおふくろにグーで殴られた」
「おこられたの……?」
赤毛の少年の背中で、小さな男の子が心細そうな声をあげる。
「んー、怒られたっつーか……その後中身出そうなぐらいに抱きしめられたり、帰ってからのメシに好きなオカズが出まくったりしたから、多分怒られたんじゃねーと思ってるんだけどなー」
「そうやってアンタの反省しない性格が形成されていったワケね……わかる気がするわ……」
ため息をつかんばかりにして黒髪の少女がコメントを漏らした。
「でもよー、入っちゃダメとか言われてたら森とか入ってみたくなるよなー。お前ら、何か面白いモン見つけられたか? ちなみにあそこからもうちょっと東に突き進むと川と滝があるんだぜ」
「二回目に行ったときに転落した場所でござるな」
「一回でやめときなさいよ学習しない子どもね」
「次はちゃんと帰れたからいーんだよ。あと滝のところヌシみたいな馬鹿でかい魚がいた。なんと足が六本あって」
「「それ魚違う」」
赤毛の少年と黒髪の少女が思わず声を揃えてツッコミを入れる。
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